私達は自身でも気づかないうちに「バイアス―認知の歪み」の影響を受け日々、選択を行っています。
バイアスとは、恋人に振られた時に感じる悲しみがこのまま一生続く、といったように思考の前後の出来事の影響等で、極端な思考に陥る傾向の事です。
「やりたいけど私には無理」「既にお金を掛けてしまっているから……」
など、私達の目標や、日々の重要な決定にも深く影響してくる重大な傾向性です。
そんなバイアス対策として有効なのが、自分はどんな傾向があるのか知る事。傾向を把握し、自分の思考を見つめる事で「今、偏った考えになっているな」と気付く事が出来ます。
今回はそんなバイアスをチェック・対策リスト形式で作ってみました。
バイアス(認知の歪み)リスト
確証:自分の正しいと思う事を裏付ける情報を無意識に探してしまう傾向
「彼女が浮気をしている」と思うと何気ないメールの返信や電話まで疑わしい証拠に思える。
≪対策:逆の否定材料を意識して探す・確証バイアスに囚われていないか確認する≫
自責:なんでも自分のせいだと考える
失敗や事故などの際に、全て自分のせいだと思い込んでしまう傾向。
≪対策:自分にはコントロール出来なかった要因はないかを考える≫
他責:なんでも他人や環境のせいだと考える
失敗や事故などの際に、全て他人や環境のせいだと思い込んでしまう傾向。
≪対策:自分にコントロール出来た要因はないかを考える≫
自分本位:成功は自分、失敗は他人のせいだと考える
成果は自分の能力のお陰、失敗は他人のせいだと思い込む傾向。
≪対策:何か手助けしてもらった事がないか、自分に出来た事はなかったかを考える≫
読心:他人が思っている事を勝手に推測して決めつける
「あいつは俺を嫌っている」などと、他人の感情を決めつけてしまう傾向。
≪対策:根拠の洗い出し・思い込みの可能性を考える≫
ラベリング:レッテルを貼って自他を判断する
「自分は馬鹿だから」「あいつは優秀だ」などと評価を固定化する。
≪対策:根拠の洗い出し・定期的な評価の見直し≫
白黒思考:何事も白黒はっきりさせないと気が済まない
「俺が正しいから相手は間違っている」といったようなどちらかは間違いだと思う傾向。
≪対策:白か黒かではなく、そういう考え方もあるという捉え方をする≫
べき思考:○○すべきというルールに縛られる
「誰も信用してはいけない!」と過去の経験から得たルールに全てを当てはめてしまう傾向。
≪対策:そのルールの適用が必要か、過剰なルールでないかを見直す≫
永久思考:今の問題が永久に続くと思う
「振られて立ち直れない。人生の終わりだ」と不幸な出来事が未来永劫続くと思い込む傾向。
≪対策:その状況が1ヵ月、1年、3年後まで変わらないのかを考える≫
拡大化:一つの問題が他の領域にも及ぶと考える
一つ上手くいかなかっただけで他の全ても上手くいかないと思う傾向。
≪対策:思考の切り分け(それはそれ、これはこれ)をしてみる・関係する要素を書き出す≫
ネガティブ予言:根拠のないネガティブな予想
「絶対上手くいかない」と根拠もなく不安になる傾向。
≪対策:上手くいかない、上手くいく理由を書き出す・不確定要素を調べる≫
ポジティブ予言:根拠のないポジティブな予想
「絶対に上手くいく!」と根拠もなく自信過剰になる傾向。
≪対策:重要な決定は即断せず、ポジティブになりすぎていないかを考える時間を取る≫
杞憂:常に最悪な予測をしてしまう
「事故に遭ったらどうしよう」「株価が暴落するかもしれない」などいつも最悪を想定する傾向。
≪対策:調査してリスクを数値化する・リスクの確立とメリットを比べる≫
大げさ:実際よりも問題を大きく見てしまう
「つい間食をしてしまった。自分はダメな奴だ!」と小さな出来事への評価を全体に下してしまう。
≪対策:実際の程度を改めて確認する(例の場合何日中、何日達成なのか)≫
ゼロ百思考:全てを手に入れないと意味がないという思考
「英語はネイティブの発音を身に付けないといけない」など必要以上に物事に固執してしまう傾向。
≪本当に全てが必要なのかを考える(カタコトでも雑談程度で良いのでは)≫
一般化:特定の場面で使えるルールを何にでも当てはめる
「熱意さえあれば伝わる!」など過度に一般化して考える傾向。
≪対策:そのルールでは上手くいかない場面がないかを想像する≫
過小評価:自分のした事を必要以上に低く見る
「一流大学を出ていないから自分は落ちこぼれだ」など自身に対する事実に即さない評価をする傾向。
≪対策:何が出来たのか、出来るのかに着目する≫
サンクコスト:自分の投じたお金・時間・手間をベースに未来を考える
「投資した額を取り戻すまで辞められない」など既に投入した金額などで選択をしてしまう傾向。
≪対策:あらかじめ撤退する基準を決めておく≫
モラルライセンシング:良い事をした後なら、悪い事をしても構わないと思う傾向
「朝早くの仕事をしたから午後はサボろう」と良い行動をしたら悪い事をしても構わないと思う傾向。
≪対策:良い行動をしなかった場合でも同じ判断をしたかを考える≫
完璧主義:完璧でなければいけないと思う
「絶対に失敗してはいけない」と完璧主義に物事を見てしまう傾向。
≪対策:失敗となる基準の設定・失敗は経験として得た物はないか考える≫
対人不安:ちょっとした相手の動作にも不安を感じてしまう
「目をそらした。嫌われたかも」と小さな動作にも不安を感じる傾向。
≪対策:自分の事をそんなに他人は気にしていない事を自覚する≫
ネガティブ想起:過去の出来事で、失敗の部分だけを思い出す
成功した面もあるのに過去の失敗ばかりが頭から離れない傾向
≪対策:思いつく失敗を全部紙に書き出し、可視化する。それを眺めながら、否定材料を探してみる≫
処理不安:事務的な相手の対応をネガティブに捉えてしまう
最低限のメッセージだけで返事が短いなど、些細な事で嫌われている、怒っているなどネガティブに考える傾向。
≪対策:返答にも多様性がある事を認識する≫
自己基準:自分の信じている事は、相手もそうあるべきと考える傾向
信仰する物や考えなどを、相手も解って然るべきと考える傾向。
≪対策:信じるという行為が相手のタスクだと自覚する。「そういう考えもある」と考えの多様性を認識する≫
過小評価:自分の処理能力を過剰に低く見る
「俺は仕事が遅い」など自身の評価が著しく低い傾向。
≪対策:一旦受け入れ、スケジュールにネガティブになる時間を入れる。そして忘れる≫
因果応報:人がした事には、それに伴った結果が返ってくるという考え
「低学歴だから、高給の仕事には就けない」と必ず過去の行動が結果に結びつくと思う傾向。
≪対策:過去の事実と今の問題を切り離して書く。その後、対策を考える≫
感情主義:人の行動する原因は必ず感情が伴うという思考
やる気が出ないから出来ないといったように感情が行動に結びつくと考える傾向。
≪対策:行動の原因となる感情を作り出す環境を作る・If Thenプランニングなどで自動化する≫
注目割引:実際の労力や金額よりも、割引率の大きさに注目してしまう状態
セール品や割引率の高い物を買ってしまう傾向。
≪対策:セールでなく、同価格で陳列されていたら目を止めたかを考える≫
ハロー効果:一つの特徴を、別の要素にも当てはめて判断してしまう。
「学歴が良いからクール」「美人は性格が悪い」など、事物が持つ要素を事実に関係なくカテゴライズする。
≪対策:一つの要素を他の要素の評価に使用しない≫
環境服従:周囲の意見に無意識に従う傾向
「みんな賛成しないから悪い意見なのだろう」と周囲の反応によって判断してしまう。
≪対策:周囲の反応と自分の意見を切り分けて考える≫
段階要請:小さな頼み事の後、次のより大きな頼み事も引き受けてしまう傾向
家に入れるのを許すと、営業を断り辛くなるように、一度引き受けると続けて受け入れやすくなる。
≪対策:連続して頼み事をされた時は、引き受けやすい事を自覚する≫
譲歩要請:大きな頼み事を断った後、小さな頼み事を引き受けやすくなる傾向
一度断ると、その後の小さな頼み事を受け入れやすくなる。
≪対策:それぐらいならと思ったら、前の依頼が大きすぎるものでないか確認する≫
機会損失の誤認:ある行動をする時、別の行動をする機会を失っているという事に気付かない
20分ゲームをする事は20分他の事が出来ない事。その事に気付かない。
≪対策:自分の時間を使っている自覚を持つ・その時間があれば他に何が出来るか考える≫
グルーピング:自身の所属するグループや好みの似た相手を過大評価する傾向
「犬好きに悪い人はいない」といったようにその人の属性だけで評価する。
≪対策:行動や言動など、客観的事実に着目してみる≫
ダニングクルーガー効果:自分の能力を平均より上と思う傾向
自身の知識・能力を平均以上だと思い込む
≪対策:客観的な計測値を元に判断する≫
まとめ
バイアスは私達の考えを良くも悪くも偏った傾向に導きます。
幸せを感じやすかったり、物事に対する満足度が上がったりする側面もあるので一概に悪い物ではないです。
ですが、バイアスが原因で間違った選択をしてしまう事。そしてバイアスを利用する承諾誘導のプロが世の中にはたくさんいらっしゃいます。
自分の傾向を知っていれば、人生の選択を迫られた時やプロとの商談の場面で、バイアスに振り回されず後悔のない選択が出来るのではないでしょうか。